■NO 136号 2013年5月1日
編集・発行 : 特定非営利活動法人 モンゴルパートナーシップ研究所
日本モンゴル民間交流会のお知らせ
紫綬褒章を受章された小長谷先生に
黒板プロジェクトスタッフからのお願い
東京・ウランバートル3000キロメートル (その15)
ノロヴバンザトの思い出 その38
会員さんからの便り
モピ12回定例総会報告
日本モンゴル民間交流会のお知らせ
(小長谷 有紀)
モンゴルパートナーシップ研究所は、2001 年 6 月に NPO 法人の認可を受けて以来、12 年を 経て、13 年目をむかえます。人でたとえれば、小学校を卒業し、いよいよ大人の切符をつか うお年ごろになりました。これまでのみなさまのご協力を心から感謝します。
また今春は、3 月に安倍首相がモンゴル国を訪問し、国際関係としてあらたな局面をむかえ ているようです。大阪においても、昨年、モンゴルから総領事バッチジャルガル氏が着任さ れ、つづいて今年 4 月 1 日より新たに総領事クランダ氏(カザフ族の女性)が着任されまし た。これを機に、新総領事をおむかえして、在阪のモンゴル人のかたがたとの交流の会を下 記の要領で実施したいと思います。モンゴル料理に舌鼓をうちながら、国籍にかかわらず、 広くご参集いただき、交流していただければ幸いです。
記
日 時:2013年5月25日(土)11時~13時
場 所:国立民族学博物館4階特別研究室
参加費:500 円(実費)
申込先:モンゴルパートナーシップ研究所れんらく室
電話およびFAX 075-201-6430 締め切り:2013年5月20日
ご注意ください。
(1) お料理の用意の都合上、事前の申し込みをお願いいたします。
(2) 国立民族学博物館は万博記念公園内にあります。
公園内を通過するには、入園料 250 円(一般・大人・個人の場合)が必要です。
ただし、館にもっとも近い東口の脇にある通用 口からは無料です。
(3) 国立民族学博物館の見学には、入館料 420 円(一般・大人・個人の場合)が必要です。
5 月中は、特別展「マダガスカル-霧の森のくらし」と企画展
「アリランの歌」も同額でごら んいただけます。
ただし、通用口からこの会合に出席する旨をお伝えいただければ、
入館証 を受け取ることができます。
これにより、展示を無料でごらんいただくことも可能です。
紫綬褒章を受章された小長谷先生に、
(松本 勝博)
「 朗報の届くあしたや鯉幟 」
小長谷先生の紫綬褒章を受賞された報に接しました。
おめでとうございます。
先生の長年の研究の成果が国家によって高く評価されたということは、モピ会員斉しく大 きな喜びとするところです。
具体的に多くを語ろうとされませんが、学者としての長い研究生活の中で、さまざまなご 苦労があったに違いありません。それを乗り越えてのご受章、先生の業績が私には大空に泳 ぐ鯉と重なって見えてきます。高かく高かく仰ぎ見る存在なのだと。
(2009年8月ゆうちょ事業の際、ズーンブレン村デンベレル学校に寄付した鯉のぼり)
モピは生まれて10年を過ぎました。しかし先生の 学者としての歳月から見ますと、まだ成人式を迎え るに至っていないと思います。
その時、その時に全 力で取組むことで、
モピの将来世間からそりなりの評価を得られるようにならなければと
決意を新たに しています。
小長谷先生は、まだまだお若いです。
次はどのような朗報を届けていただけるのでしょうか。楽しみにしています。
黒板プロジェクト、スタッフからのお願い
(斉藤美代子)
モピ設立当初から黒板を届け続けて今年で 12 年目を迎えます。今まで合計 1527 枚を届け ることができました。ずっと継続してこのプロジェクトが続いているのも、寄付してくださるみなさまのおかげだと思っています。まずはお礼を申し上げます。
始まった当時、2002 年を思うと、モンゴルもずいぶん変わりました。物量は増え、情報の ネットワークは広がっています。でも人々の暮らしはみんながよくなったとはいえず、変化 は良い方向だけとはいえません。特にウランバートル周辺部へ地方から人々が移動してくる 状況には変わりがなく、移動してきた人々の生活は何ら向上していません。そこには子ども たちも含まれています。周辺部の学校は移動してきた子どもたちでいっぱいになり、3 交替で 教室が使われています。
近年、モピではこのウランバートル周辺部の学校、そして障害を持つ子どもたちが通う学 校への配布を重点的に行っています。周辺部の学校の中でも特に教室の状況が悪い学校につ いて地区役所の教育局から情報をもらい、訪問して黒板を届けています。そういう学校は、 ウランバートルだから恵まれているとはいえない状況だそうです。障害を持つ子どもたちの 学校は、まるで“忘れられている”状況だということで、周辺部の学校とあわせて、今年も また再度配布が行えればと思っています。
みなさまのご協力をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
東京・ウランバートル3000キロメートル(15)
-ヤルゴイは春告げ花 –
(梅村 浄)
エンフタイワン通りをトロリーバスに乗って東に 20 分くらい走ったところにある語学学校 にしばらく通っていたことがありました。2011 年の春。暗い廊下を奥まで歩いて、階段を 2 階に登ると、小さな教室にホワイトボード、デコラばりの机と5脚のパイプ椅子。生徒は私 の他に、韓国人が 2 人。モンゴル大学出身の若いムーギーバクシから簡単な会話のプリントをもらって、それぞれ答えを書き込みます。
̶ 女の子はゲルの外に出て、花の芽が出て来たことに気がつきます。暖かい陽射し。
山羊を呼ぶと、いつも子山羊は駆けてやって来ます。次の日、もう咲いたかと見に行くと、花芽 はすっかり食べられてしまっていました。女の子は、山羊が来ないようにお兄さんに頼んで 柵を作ってもらおうと思いました。
山羊に食べられて咲かなかった花の名前は「ヤルゴイ」。バクシはモンゴル東部にあるスフ バートル県で生まれ育ちました。両親は牧民をしていて「草原いっぱいにヤルゴイが咲いて、 風に揺れているのを見ると、ああ春になったなあと思うんですよ」と、話してくれました。
他の生徒 2 人が休み、私だけが授業に出席した時に、日本文学について話をしたことがあ りました。
「モンゴル語に翻訳された太宰治の小説を1編だけ読んだことがあります。タイトルはなん だったかな。2 人の娘と暮らしていた校長先生が出てきます。妹が重い病気になって亡くなっ た時の姉の話です。読んだことありますか」 「若い頃、太宰治が大好きでしたが、うーん、覚えていません」
その会話が気になって、アパートに戻ってからインターネットで検索してみました。日本 語の『葉桜と魔笛』を電子書籍で読むことができました。それは太宰の作品の中では、死を あつかいつつも陰鬱さより明るさが感じられる短編なのでした。
間もなく卒業試験があり、5 月 31 日に卒業式が終わりました。JICA のシニア隊員である佐 藤さんから、毎週火曜日の夕方にウランバートル在住の外国人が集まって、ボグド山に登っ ている話をきいていたので、その日のうちに連絡をとって参加しました。
バヤンゴルホテル前に集合です。顔見知りは佐藤さんだけ。世話人は長くウランバートル に住んでいる日本人男性でした。7000 トゥグルクの会費を集めます。頼んでいた小型バスは 故障で使えず、代わりにやってきた 1 台のワゴン車に総勢 13 人が乗り込みました。街中を走 っているうちは、それでも良かったのですが、トール川を渡り、左に折れて舗装されていな い路にでると、その揺れは半端じゃなく、詰め込みすぎで誰かの膝に坐っている女性は、そ の度に転げ落ちそうになりました。ボグド山の麓に着きました。1 時間はそれぞれ自由に過ご します。私と佐藤さんは近くの丘に登りました。
登るにつれて、トール川の向うに拡がっているウランバートルの街が立ち上がって来まし た。新しい高層アパートの建築が進んでいます。
(2011.5.31ウランバートル市ボグト山にて 梅村浄撮影
5 月半ばまで降雪がありましたが、さすがに ここも春。あちこちに黄色い花、白い花が咲いていました。強い風と- 30°Cの気候に耐えて冬を過ごし、短い茎の上にそれぞれの小さな花を咲かせています。 丘の頂上にたどり着きました。大きな岩の向うを回 ると紫色の花が目につきました。カップ状に集まった紫色の 5 枚の花弁の中に黄色い蕊が固まっています。 何気なく写真に撮りました。目を下の斜面に転ずると、 あそこにも、ここにも紫色の花が。電池切れ寸前のカ メラでこれもパチリ。これがヤルゴイ?!
(2011年5月31日 ウランバートル市ボグド山にて 梅村浄撮影)
下の方に世話人の姿が見えました。足元に気をつけながら、石ころの多い斜面を下りまし た。まだ、ジョギングの人達は戻って来ません。モンゴル人の運転手が、車からサンドイッ チの入ったダンボール箱とクーリングボックスを下ろしているところでした。
西の方に太陽が傾きかけました。冬の間、5 時には真っ暗になっていましたが、この時期 8 時でも明るく、輪になってビールで乾杯してから、自己紹介に移りました。皆、英語です。 商社に勤める若いアメリカ人男性は、週末にウランバートルで行われるマラソンに参加する ために、今日は練習をしたんだそうです。彼が「私はフリー」と発言したのをきっかけに、 フリーかどうか、皆言わされる破目となりました。
サンドイッチを食べながら、めいめいが名刺交換、情報交換をします。大学に研究員とし て来ているベトナム人女性と話しました。研究テーマであるモンゴルの経済について、質問 したのですが、互いの英語力不足のため、沈没。
帰宅してから、自然史博物館で購入し、後生大事に持っていた『ホスタイ国立公園の花』 という本を開いてみました。英語で書かれていますが、美しい写真とモンゴル語の名前も併 記されているスグレモノです。
ヤルゴイはキンポウゲ科のオキナグサの仲間で、南部のゴビ地帯を除く、ほぼモンゴル全 土に分布しています。「この植物を食べた動物は速やかに体重を増やす」とも書かれていて、 子山羊の大好物という練習文の中味がうなづけました。
翌日、ムーギーバクシ宛にヤルゴイの写真を送りました。間もなく帰国すると告げると、 さぼりがちで数回しか出席しなかった私のために、お別れ会を開いてくれました。
ヤルゴイはあの薄暗い教室と、ホワイトボードに書かれた文字と分ちがたく結びついて私のモンゴル語語彙集に登録されています。 (2013.4.20)
ノロヴバンザトの思い出 その38
(梶浦 靖子)
1991 年の大ナーダム 日本文化週間が終わるとあっという間に7月で、ノロヴバンザドのクラスも夏に向けて休みとなった。再びナーダムの季節である。国を挙げた大ナーダムが、ウランバートルで この年も開催された。まだ社会主義の体制にあった昨年とはちがい、軍事パレードや少年 少女の手旗マスゲームは無くなった。欧米をはじめとする外国からの観先客が倍増し、街 なかは人と車であふれかえった。
普段なら考えられないほど混んだバスでメイン会場のスタジアムに行き、開会式を見た。 客席の一画を舞台にしてノロヴバンザドと歌舞団の選抜メンバーによりオルティン・ドー 「平安の喜び Enkh mendiin bayar」が演奏された(譜例 23)。オルティン・ドーの歌集 に載っている歌詞は次のようなものだ。
ゼー この善き平安の喜びにあたり
これより先は 曇りなく
ゆるぎないこの幸いを
楽しみ祝おう (サンピルデンデブ、1984 年、P.264)
しかし現在、実際に歌われる歌詞は次の通りである。
ジャーヒー この政権の 平安の喜びが
完全になし遂げられた この日を
楽しく祝おう
なぜなのかと思っていたが、ノロヴバンザドによれば後者は革命以降、新たに作られた ものであるという。どうりでやや「革命的」で政治的な語句が並んでいる。新しい歌詞の 作者についてはよくわからない。
曲が終わると高らかに開会を宣言するアナウンスが流れ、観客も演奏者もそろって「ウ レー、ウレー」と喚声を上げ始めた。これは「万歳」に似た掛け声で、よく見るとみんな 両の手のひらを上に向け、まるでお盆を乗せその下をなでているような動作をしながら叫 んでいる。
スタジアムのフィールド部分の草地では、モンゴル相撲の試合があちこちで7~8組く らい同時に行われている。その間、会場のスピーカーからオルティン・ドーの名曲の数々 が流れ続けている。少し前に触れた「万馬の筆頭 Tümen ekh」は特にひんぱんに流される ようだ。歌詞は次の通りである。
ゼー 宝持つ人を見つけ出し 傍らの悪しきことを清め
今とこれからを 善きものとなしてゆくに違いなく
善き行いのために 命の限り 美しき国の中で 持てる力の限り 奮闘し身を尽くす 幾千万の筆頭精鋭はこの者なるかな
これは数百年前のナーダムでの競馬で優勝した馬を讃えて作られた曲とされている。馬 を讃える詩句は、まるで人間の目指すべき徳を述べているように見える。
モンゴルの口承文芸の英雄叙事詩などでは、英雄を乗せる駿馬はしばしば人格化され、 時に迷い、弱気に怖じけづく英雄を叱咤激励し、諭すなどする。馬のほうが教養や人徳を 備えた「人格者」のようにさえ描かれる(原山煌『モンゴルの神話・伝説』182 頁~)。 馬は遊牧生活のパートナーであり、有能で賢く、
繊細に人の心を感じとる馬は人間の友のような存在にもなる。モンゴルの人々は、
そうした馬という生き物に人としての理想像 を投影しているかのようだ。
その年のナーダムでも競 馬が行われた。日本大使館の 人が車に乗せてくれたので、 郊外の会場に連れていって もらった。
空港に近い広大な丘陵地 に着いた。そこが競馬のゴー ル地点で、人馬は数十 km 先 からすでにスタートしたと いう。
馬群がやってくるまで小 一時間近く、まぶしい夏空と 緑の草原を眺めて待つと、彼 方の丘から先頭集団がやっ と姿を現した。見る見るこち らへ近づいてくる。乗っているのは、日本でいえば小学生、1年生から6年 生くらいまでの少年少女ばかりだ。デール姿の子供もいるし、セーターにズボンの子もいる。 女の子はおさげ髪をリボンで飾っている。紙で作った王冠をかぶり、マントをはおった学芸 会の王子様のような少年もいる。そうした子供たちがしっかりと馬上に踏んばり、ムチを振 りまわし、すさまじいスピードで馬を走らせている。 ドドッ、ドドッと地響きを立てなが ら人馬が目の前を駆け抜けていく。
やがてゴール地点では先頭の人馬を年配の男性がつかまえ、大声で口上のようなものを 述べ始めた。「万馬の筆頭」の歌詞のような、讃える言葉を述べていたのかもしれない。 そうしてこの夏のナーダムもつつがなく過ぎていった。 (つづく)
会員さんの便り
(荒木 伊太郎)
長居の自然史博物館に「モンゴル恐竜化石展」を見に行ってきました。
7000万年前の大きいのや、小さいのや卵もよく出てきたものと驚き、感激しました
第12回 MoPI定例総会報告
会期:日時:場所
4月6日(日)午後1時 MoPIれんらく室
会員 総 数 172名(4月6現在) 出席・委任状 119名
第1案 a)平成24年度事業報告 b)平成24年度収支報告
c)平成25年度事業計画(案) d)平成25度収支予算(案)
監査の結果、 相違ないことを認めます
(監査・中野 吉将) 上記議案は、全会一致で承認されました。
当日、暴風雨警報が各地に出され、交通機関が止まるなど予報が出たため出席予定を変更 される方があるなど大変な日になりました。その中で開催された総会でした。
悪天候の中、出席して下さいましたみなさまありがとうございました。
モピ活動として、今年度も黒板配布を続けていくこと、
京都府長岡京市とモンゴルズーン ブレンソムとの友好都市に向けての取り組みに携わっていくことなど申し合わせて閉会しま した。この件について、
村上雅彦が担当者として5月10日過ぎには、話合いが行われることが 決まっています。
小長谷先生 紫綬褒章の受章おめでとうございます。
先生の受章は、モピに所属する私たちにとっても驚きと共に
大きな喜びにつつまれていま す。
幸せな、誇らしい気持ちをいただきました。ありがとうございます。
「ご家族のみなさまにもおめでとうございます」を申し上げます。
小長谷先生の後姿を追いながら、NPO法人としてのモピ活動を継続させて行けるように、こ れからも会員の皆さまの力を寄せていただけますようお願い申し上げます。
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特定非営利活動法人 モンゴルパートナーシップ研究所/MoPI
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〒617-0826 京都府長岡京市開田 3-4-35
tel&fax 075-201-6430
e-mail: mopi@leto.eonet.ne.jp
http://mongolpartnership.com/
本部
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
国立民族学博物館小長谷研究室内
tel:06-6876-2151(代表)
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