■NO 133号 モピ通信

■NO 133号           2013年2月1日

編集・発行 : 特定非営利活動法人 モンゴルパートナーシップ研究所

  東京・ウランバートル3000キロメートル(12)

  ノロヴバンザトの思い出 その35

   モンゴル化石恐竜展について・お知らせとお願い

    MoPI新年会&例会 再度ご案内

    お知らせします

    新年のご挨拶をいただきました

    編集後記

 

 

   東京・ウランバートル3000キロメートル(12)

                                   – 援助するということ-             (梅村 浄)

  <スジャータシャンドへの寄付>

この秋、ウランバートルで未就園、未就学の障害を持つこども達の訪問保育をしている NGOスジャータシャンドに日本製の中古車を寄付しました。 昨年冬、スジャータシャンドの保育士である高橋生仁子(きみこ)さんがゲルに住む子どもたちを訪問しようと、教材を担いでバスに乗ったところ、ステップから仰向けに落ちて、 後頭部を打ちました。いっとき気を失っていたのですが、運転手と車掌に助け起こされて、 バスの座席に座らせてもらい事なきを得ました。昼間マイナス 10°C以上もあるウランバート ルの冬に、頭の大きな瘤はさぞ痛かっただろうと思います。

月曜日から金曜日まで、20箇所以上のゲルを訪問し、2箇所の国立保育園で音楽室の空き 時間にグループ保育をする時、荷物を運ぶ足があったら良いのでは?と思っていたところ、 この夏の訪問時、ある企業から車を寄付する話があると聞き、提案しないまま帰国しました。 しばらくして、その会社とは連絡がとれなくなったことを知り、高橋さんに車の寄付を申し出ました。モンゴルではガソリンの価格があがっているので、車があっても運転できない場合もあり ます。寄付を下さる会社もあるというので、ほっと安心しました。モンゴルから日本に一時帰国したスジャータシャンドの役員さんに購入資金を渡しました。 車ザハ(中古車展示場)に行って、荷物を積むためのハッチバックがあり、悪路も走れる4輪 駆動のスバルインプレッサを手に入れることができたのが10月。税金の支払いや車の整備、 運転免許証登録の問題をクリアーし、ようやく12月からグループ保育に参加する子どもを、 送り迎えできるようになったとの知らせがありました。

車は教材を持って行くだけでなく、歩けない子どもを遠方に運ぶ役にたつんですね。求め られて、以下の文を書きました。挨拶文はまず日本語で書き、モンゴル人にモンゴル語に翻 訳してもらった文と併せて、ホームページに載りました。私は日本で長年、小児科医として障害のあるこどもをたくさん診てきました。 こどもは友だちを求めています。障害があるこどもこそ、友だちが必要です。 スジャータシャンドはその理想を掲げて歩み出しました。モンゴルの冬は長く、寒いですね。でも、必ず春がやって来ます。きみこバクシと力をあ わせて、こども達とともに進んで行って下さい。私が贈った日本の車が、少しでもその役にたてば幸いです。                                                          2012年秋 梅村 浄

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<援助するということー映画『路上のソリスト』を観て>

援助するとは何だろう? 先日、日本に住む知人から「外国人が自国のやり 方を押し付けて、他国の人々を援助することは、 どうなのだろう?」という素朴な疑問の投げかけ がありました。

小長谷有紀さんに「援助って何?」のつぶやき をメールしたところ、ちょうど国立民族学博物館 でみんぱくワールドシネマという催しをやってい て、今期は「支援と絆」をテーマに映画を上映し ている。7月に上映された『路上のソリスト』を観 てみたらと、勧められました。

早速、アマゾンの中古DVDを探して、手に入れました。2009年制作のアメリカ映画です。 舞台はロスアンゼルスの路上。ロサンゼルス• タイムスの記者であるスティーヴ• ロペスは、 公園の片隅で暮らすナサニエル・エアーズが弾く2本弦のバイオリンの響きに惹き付けられ ました。スティーヴはナサニエルが音楽の名門校であるジュリアード音楽院を中退したこと を探り出し、新聞のコラムに書きました。これは実話です。

コラムは大反響を呼び、白髪で上品な女性読者が大切に保管していたチェロをおくってき ました。これを路上生活で盗まれないように確保するのは無理と、スティーヴはナサニエルにホームレス向けの保護施設入所を勧めます。

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名器であるチェロの世間的価値を知るスティーヴと、音色だけが価値あるナサニエルの間で「これ はいったい誰の所有物なんだ」という食い違いと対立 が生まれます。結局、ナサニエルはチェロを弾きたい ために、施設入所を受け入れます。

さらにスティーヴは、高名な音楽家にナサニエルを 紹介して、チェロの演奏会を企画します。社会で音楽 的才能を発揮することがナサニエルのためだと思った からです。ナサニエルは緊張のあまり、幻覚に囚われ て逃げ出してしまいました。統合失調症の症状です。 薬を服用して治療をするように説得しても、ナサニエ ルは聞き入れません。今のままで路上生活を続けるの が、自分にあっているというのです。

猥雑なロスの路上風景とベートーベンのチェロソナ タが響き合う中で繰り広げられる男二人の友情(=支 援と被支援の)物語でした。

DVDはレンタルショップで使い古されたモノでしたが、このまま眠らせておくのも勿体ない ので、札幌で成人障害者の在宅介護の事業所に勤めている息子にまわしました。何とか時間 を作り出して観たらしく、感想を言って寄越しました。一部を書き写してみます。

-当事者と介護者との関係がよくあらわれてたと思います。
良かれと思ってやることが裏目に。とか、普通はこう望むだろう。
とか、誘導するような情報の与えかた。
とか、結局本人にではなく、
公にすり寄っちゃうとことかねー
あの施設の職員の接し方も良かったなー
こっちの事業者で、月1でミーティングしてるけど、
ほとんどこういう問題。
尽きないけどやっていくしかないし、
それにじゃあ、やり方が一つかって言ったら全然そんなことないし。
けどやっぱり、本当に当事者が望んだのか、 気まずくならないように、
そう言ってくれてるだけなんじゃないかとかを
見極め続けていかないといけないよね。
 ̶ 以上、引用終わり

反省。 私が車をおくるにあたって書いたメッセージは、こどもやお母さんたちが今すぐ望むことではないかもしれません。新学期の今は「楽しみに待っているきみこバクシが、毎週来てく れることが嬉しい」だと思います。

うーん、ほんとうにこどもたちの笑顔が一番です。急ぎすぎずにゆったりと。

と、自戒し たことでした。(2013.1.15)

 

  ノロヴバンザトの思い出 その35

        寮の部屋割り問題                                           (梶浦 靖子)

春の訪れとともに、外国大学生寮に問題がおきた。大学当局が、留学生をなるべく一部屋2名で住まわせるとの方針を打ち出してきたのだ。空いた部屋は観光客向けの宿泊施設 とし、大学の収益にするという。民主化と市場経済体制へ移行するための措置、というこ とらしかった。寮では留学生のほとんどが、最初は同国人二人で一部屋に住むことになっ ている。ただ、留学期間が一年間の者と二年間の者がいて、二年目からは―人部屋に移れ るのが通例だった。大学院生は優先的に一入部屋などの慣列もあった。それが、二年目の 者は新たに来る留学生と同室にするというのだ。私を含め期間が二年の者は、そんな!と いう感じだった。「日本人同士で同室になると、相手がどんなにいい人でも仲が悪くなってしまう」と留 学生の間ではよく言われた。日本人はどうも相手に気を遣い、遠慮し過ぎて疲れてしまう らしい。お互いの起床や就寝時間か合わないと、寝ている方は相手の机の照明や、ささい な物音で眠りを妨げられ、起きている側はそれを気に病みながら机に向かわなければなら ない。結果、同室になって数カ月でお互いに嫌気かさしてしまうのである。やっとそうした毎日から解放されると思っていた身としては酷な話である。

それで、一 入部屋を希望する者は各自、大学側に直訴しに行った。

私も日本語学部長室をたずねた。以前にもさまざまな要望を伝えに行って、そのたびに まずは拒絶されていたが、この時の反応はそれまでとは比べ物にならなかった。

室内には学部長の女性のほか、副学部長の男性もおり、どちらも年齢は30代くらいの 若い人たちだった。

「これ以上二人部屋に住むのは耐えられません、そのような措置は取りやめてください、 同意できません」と訴えたところ、 「何を言ってるの?話すことはありません」 と追い払う調子だ。私はそれでも食い下がり、ともかく思いつく限りの言葉を並べ続けた。こういう場合、語学力が足らないと言葉の選び方が過激になる。つい、なぜこんな弾 圧的なことをするんですか?などと言ってしまった。これで先方は、何だと!?と顔色を 変え、激しく言い返してきた。気に入らないなら国へ帰れ、モンゴルから出て行け、もっと待遇のいい先進国に留学すれ ばいいだろう、アメリカでもヨーロッパでも行ってしまえ!と、身もふたもない言葉をむき 出しの怒りとともにぶつけて来るではないか。あまりにもストレートなけんか腰の言いよう に驚き、なぜこんなことまで言われなければならないのかと、情けなさでふるえて涙が出て きた。それでも、そんな言い方はないでしょう!とこちらも言い返し、あちらもさらに強い 調了で返してくるので、かなりの修羅場となってしまった。もっとも、こちらの失言が原因 だが。口は災いのもとだ。

らちが明かないので、大使館に相談させてもらいます、を捨てぜりふに私はいったん退却 した。当時の学生はこの言葉を最後の手段として使っていた。

解決はしたが

言葉の通り相談をしに行ったのだが、日本大使館の反応はあまり芳しくなかった。私た

ちの方が少しわがままではないのか、郷に入っては郷にではないか、ということだった。 そうだろうかと落胆しているうちに、日本から新年度の留学生が確か6名やって来た。 しかし彼らは私たちの住んでいるところとは別の、本来モンゴル人学生向けの寮に入れられ た。そこの設備はさらによろしくなく、二人住める部屋が数十あるのに、シャワー 一個の シャワー室がたった一ヶ所あるだけという話だった。新留学生と会って話をするようになっ たが、やはり生活するにはきびしいようだった。

そしてさらに事件が起きた。新留学生の一人が、いったん入った部屋から、強引に移動 させられたのだ。ある朝、数人の男がその学生の部屋に押しかけ、荷物を勝手にほかの部 屋に運んでしまった。もっと狭くみすぼらしい部屋だったという。茫然とする学生に、

「お前は今日からここに住むんだ」 と言い渡して去っていったという。これは抗議すべきことではないかと思った。大学側が自 発的に留学生の待遇を改善してくれるとは思えない。私たちは我慢して帰国しおおせたとし ても、翌年、翌々年の留学生か同じ目に合うのではないか。いま声を上げておけばそれだけ 改善も早まるのではないだろうか。そう思って、留学生一同でふたたび大使館に相談した。 大学のさらに上の役職の人のところにも直談判に行った。

留学する前、バブル華やかな日本は東京で、住んでいたアパートが地上げに遭ったこと がある。一方的に退去をせまられ、恐れおののいて自治体の法律相続にかけこんだ。そこ で法の精神や権利や義務の話を聞かされ、目からウロコが落ち、おかげでまずまずな形で やり過ごせたものだった。そうした経験からか、このような問題にはつい躍起になってし まったのかもしれない。

ともかくも大使館にふたたび相談したところ、先日の副学部長の発言に、留学生の数を 増やして送り込んでくる日本政府が悪い、と受け取れる部分があったことが判明し、大使 館としても正式に抗議してくれて、留学生の扱いを改善するよう求めてくれたのだった。

そうして新留学生たちも本来入るべきこちらの寮に移り、それぞれ一入部屋が確保でき、 親しいモンゴル人の家にホームステイさせてもらうなどして、日本人の部屋割り問題は終 息した。

しかしその後、こちらの寮に住んでいたベトナム、ラオス、カンボジアの学生が、あちら の不便な寮に住まわされることになった。それらの学生数十人が荷物を手に、列をなして こちらの寮を出て行き、そのさまを寮のジシュールの婦人が玄関先で悲しげに見送っていた。

私は、どうしたらいいのかわからなかった。さすがに他国のことまでは口が出せない。 出し方がわからない。私たちは行動を起こすべきではなかったのだろうか。わからない。 こちらを立てたらあちらが立たない、国際社会のむずかしさを見たように思った。割り切 れない気持ちのまま、自分の日常に戻るしかなかった。(つづく)

 

  モンゴル恐竜化石展について・お知らせとお願い

大阪市立自然史博物館(ネイチャーホール)大阪市・長居公園内 ゴビ砂漠の恐竜化石は、

なぜ古生物学者を惹きつけてやまないのか?

2012年11月23日(金・祝) ~ 2013年6月2日(日)

2013年3月2日(土)・3日(日)・9日(土)・10日(日)の4日間ゲルがたてられ、 ゲルの中でモンゴルの写真展(松本勝博撮影分)など民博、モピも参加するイベントが催され ます。是非おいでくださいますようご案内いたします。

今月のモピ通信を郵送する中に、モンゴル化石恐竜展のチラシを同封しています。周りの 方、お知り合いの方に配っていただきたくお願い申し上げます。

メール配信の方に モンゴル恐竜化石展のチラシ、HPにアップしておきました。

              http://mongolpartnership.com

  (事務局)

  MoPI新年懇親会&例会再度 ご案内

00-02新年会

                      参加していただいた方々には、恐竜展の割引券をお渡しいたします。

 

  お知らせします

☆地球村に架ける橋                                                                           (高賛侑)

毎日新聞大阪版に隔週連載していた「地球村に架ける橋」は昨年3月で終了しました。1999 年に兵庫版にルポを書き始めて以来「異郷暮らし」「異郷の人間味(ひとみ)」「地球村に架け る橋」と内容を変えて13年間。ご協力下さった皆さんに深く感謝致します。

☆電子出版

「地球村に架ける橋」と『アメリカ・コリアタウンーマイノリティの中の在米コリアン』(1993 年刊。社会評論社)がエンタイトル出版から電子書籍として出版されました。

☆『ロス暴動の真実』上映

在米コリアの制作者から入手したDVD「ロス暴動の真実ーコリアタウンはなぜ襲われたか ー」の上映活動は関西、東京、北海道などで22回行いました。ご覧になった方々から大きな 反響がありましたので、今後も続けていきたいです。

☆ユーチューブ映像

私が撮影・編集したロサンゼルス・コリアタウン、ベトナム・クチ地区、中国・大同市など の映像をアップしていますので、良かったらご覧下さい。

「地球村に架ける橋」の電子書籍が出版されたご報告

毎日新聞大阪版に私が隔週連載していた「地球村に架ける橋」が電子書籍として昨年末に 出版されたことをご報告致します。昨年春に、原稿のチェックなどをしていただいて以来、 ずいぶん日にちがたってしまいましたが、ご協力に深く感謝致します。

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ご承知の通り、電子書籍は紙に印刷することができず、パ ソコンやアイパッドなどで読むことになります。ヤフーなど の検索で「電子書籍 地球村に架ける橋」などと入力すると、 紀伊国屋等のホームページに同書の案内が出てきますので、 お試し下さい。

私が1999年に毎日新聞兵庫版にルポを書き始めて以 来、「異郷暮らし」(在日韓国・朝鮮人対象)、「異郷の人間味 (ひとみ)」(在日外国人対象)、「地球村に架ける橋」(国際 交流関係の団体・個人対象)と内容を変えて13年もの間、 ご協力下さった毎日新聞社や取材に応じて下さった方々、読 者の皆さんには心からお礼申し上げます。ルポの連載は昨年 3月に終了しましたが、今後も在日韓国・朝鮮人や在日外国 人に関する取材を続けていきますので、今後とも末永くお付 き合い下さいますよう、よろしくお願いいたします。

■例)紀伊国屋書店BOOKWEB

 

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest
/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=EK-0072443&TYPE=E%20BOOK

地球村に架ける橋 高賛侑【著】エンタイトル出版 (2012/12 出版)価格: ¥999 (税込)

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  新年のご挨拶をいただきました

(川崎 澄子)

新年おめでとうございます。

いつもモピ通信で、皆さまの活動の様子を届けていただき有難うございます。

昨年は、美代子さま、スタッフの皆さまのお陰で、黒板を念願の学校へ届けることができ て、とても嬉しく感謝しています。今年は必要とする学校へ届けたいとおもいます。 新しい年が、モピの活動の輪が広がり、平穏で明るい年となりますよう願っています。

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  編集後記

寒い日が続いていますが、季節が少しづつ移っているようです。

厳寒のモンゴルの写真を 送ってもらいました。私たちには想像が出来ない風景です。

最近、モピの出前授業の要請が多く入るようになっています。

担当者の努力が実っている こととミニゲルの活躍のおかげです。

デールを何枚も寄付していただいたり備品も増えています。

モピを大切に思っていて下さるみなさまに支えられ、ありがたく幸せに思います。

これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

(事務局 斉藤生々)

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連絡室
〒617-0826 京都府長岡京市開田 3-4-35
tel&fax 075-201-6430

e-mail: mopi@leto.eonet.ne.jp

本部
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1

国立民族学博物館小長谷研究室内

tel:06-6876-2151(代表)

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