■NO 202号 モピ通信

編集・発行 : 特定非営利活動法人 モンゴルパートナーシップ研究所 

『Voice from Mongolia, 2019 vol.51』

 ノロヴバンザトの思い出 その93

モンゴル学習支援事業&国府小学校

 事務局から 

 モンゴル学習支援事業&南住吉小学校に 

 お孫さん同伴のモンゴルの旅募集

 靑山讃頌舎2019年春展のご案内 

************************************************************************************

『Voice from Mongolia, 2018 vol.51』

(会員 小林志歩=フリーランスライター)

「モンゴルではイモは主要な農産物なのに、国内で販売されているポテトチップスは 100%輸入品。付加価値を付けた商品を生産することが命題なのに実態が伴っていない。 そのため、日本の企業などが進出すれば市場を独占できる状態でもあります」
―――中村 功・JICAビジネス交流専門家、ウランバートル在住

自他ともに認めるポテトチップス好きである。モンゴル出張中に現地のスーパーでよく買 う商品レイズ(米・フリトレー社)、パッケージ裏を見るとロシア製だ。サワークリーム味に カニ味、本当は「うす塩」がいいのだけど…。さて、前回の先史時代のお話から一転、今回 は最近のビジネス事情をお届けします。

中村さんは、青年海外協力隊員として赴任した2002年以来、モンゴルのビジネス界に 身を置いて来られた方。同国での会社経営、日本の商社業の出先などの経験と人脈を生かし、 現在はウランバートルのモンゴル・日本人材開発センターで両国の企業間の交流支援を担当。 最近、現地の企業関係者から農業分野で日本企業の技術が欲しいとの問い合わせが増えてい るそうで、北海道に情報収集に来られたのに合わせ、モンゴル進出に興味を持つ企業との意 見交換会が開かれた。

中村さんによると、現地では韓国企業の快進撃が続いており、特に近年は顕著だという。 韓国企業経営の「カフェ・ベーネ」は3年間で25店舗と躍進。同国系大型ショッピングセ ンターのeマートはにぎわい、2店舗目オープン。昨年フランチャイズで初出店のコンビニ 「CU」は瞬く間に11店舗、目標は5年間で200店舗、のスピード感。モンゴル人の財 布をガッチリつかんでいる。

日本企業の進出・提携がそう進まない背景に文化の違いがあるが、両国の人々の最大の違 いは『不確実性の回避』に対する意識、と指摘。確かに、彼らにとっては「先のことはわか らない」のが大前提だが、日本人は「まかぬ種は生えない」と準備と計画に最大限の力を注 ぐ。話がかみ合わないうちに、お互い嫌になって来るのだ。

生産者、企業にとって重要なマーケットについて、「国内市場が小さい、とよく言われるが、 2千万人近い市場が隣接している」。その市場とは中国・内モンゴル自治区。呼和浩特(フフホト)305万人、包頭(パオトウ)210万人、烏蘭察布(ウランチャブ)270万人、 張家口449万人、大同284万人、合計すると1518万人(モンゴル民族は600万人)。 国境のザミーンウーデから烏蘭察布までは直線距離300キロ、ウランバートルからは90 0キロ。これは東京・博多間の距離に相当し、「北京もそう遠くない」。

聞いていて思い浮かんだのは、首都近郊トゥブ県ボルノールで出会う「種まく」モンゴル 人たちの日焼けした顔。この国に「ビジネス」が不在だった80年代に国営農場で汗をかき、 90年代の混乱期には収穫した野菜を街角で売って家族を養い、今なお現役のベテラン農家 さんも少なくない。ドライフルーツのように食べられる乾燥野菜を商品化した農家のお母さ ん、あなたのマーケットは、ウランバートルでなく、中国・内モンゴルにあるかも知れない。 そこを狙うには、地域の農業者が一丸となり、安定的に供給できる体制を整えることが何よ り必要となる。

スイス援助によりポテトチップスに適したドイツ品種も導入されている。800ヘクター ルで栽培したかつての国営農場の実践を思い出し、村一丸となって作付けを増やし、モンゴ ル国にポテトチップス工場を!日本が誇るカルビーポテトさんの技術力・ノウハウでぜ ひ!!!(敬称略)

お知らせ/同センターなどが毎年開く恒例の日本文化紹介イベント、今年は8月17・1 8日の両日、「ジャパン・フェスティバル」としてウランバートルで開催決定。出展する企業・ 団体等を募集中という。

************************************************************************************

今月の気になる記事

「モンゴルで子どもが体調を崩すと、本当に大変」。中村さんも、モンゴルの友人たちも異口 同音に言う。北海道と比べものにならない寒さ。首都では煙、慢性的な交通渋滞。そんな中、 保育園・学校に子どもを送り、職場へ通う日常はそれだけでもキツそうだが、子どもが急な 病となれば、そのストレスと心配は想像以上だろう。最近、同国の民間企業と研究者が共同 で発表した大気汚染対策プロジェクトは、ゲル地区住民3万3千世帯が住まう集合住宅の供 給とのことだったが、事業総額は天文学的数字だった。「帰っても…ね。大変だから」。学位 を取っても日本に残りたい、と言うモンゴル人留学生は多い。理由は収入の格差だけではない。

「煙と練炭」 ※訳注/石炭、木炭、コークスなどの粉末に粘結剤を加えて固めた燃料

(筆者:D.オユンチメグ)

首都のとあるゲル地区に暮らすS.ボルド一家。大気汚染の元凶と名指しされるゲル地区の 住民である彼は、ゲルにヒーターを入れた。世帯主として曰く「うちのゲルには電気式、火 を燃やす暖房を入れたから、政府による電気の割引が適用となり、電気料金が半額くらいに なるかと思いきや、実際には高いまま。相変わらず石炭を使っている」とのこと。家族の直 近2か月の電気料金は19万7千~21万9千トゥグルグ(※約8500円~9500円) だった。割引分が7万4千~8万トゥグルグあるが、電気と石炭を併用する世帯では、支出 が大きく割高となる傾向がある。石炭だけで暖房をした場合は、月に17万~18万5千ト ゥグルグ(約7400円~8千円)の石炭代を支出。言い換えれば、石炭一包14万~15 万トゥグルグ(約6千~6500円)、月の電気料金が3万~3万5千トゥグルグ(約130 0円~1500円)。それではヒーター設置を推進しても、排出される煙は減らない。電気に よる暖房の場合、世帯の家計負担がさらに増すだけでなく、首都の送電網がもたないとも役 人から聞いた。だとすれば「大気汚染と煙」から、いかにしてオサラバするか。今より家計 を圧迫することのない、解決策が待たれている。

練炭が煙を緩和…

大気汚染を緩和するために、石炭の使用を減らす方針が出され、政府がより効率の良い燃 料の生産を推進している。首都の人々は一冬に120万トンの石炭を燃やすが、石炭使用量 を減らすテコの役割を期待されているのが練炭。練炭を使用することで、石炭そのものの使 用量を半減でき、汚染を30-40%低下させるとの数値も示されている。

この練炭の生産・備蓄は、政府と民間企業が協力して進める。現状では練炭を生産する企 業は10社あまりあり、11社で「モンゴル練炭生産組合」を組織。中でも「タバントルゴ イ燃料」有限会社は国営の看板で練炭炭生産を行っている。これらの企業はすべてMNS- 5679-2014基準を満たした練炭を出荷。(中略)契約では、各社は1トンの練炭を1 5万トゥグルグで販売する契約で、政府から1トンあたり5万トゥグルグを得るしくみとい う。(後略)

冬の初め頃から先月(※12月)初旬までは、ソンギノハイルハン地区の2街区で、確か に練炭が売られていた。しかし備蓄を準備する、との理由で突然販売が中止され、多くの消 費者が不満を抱いた。同地区住民のB.ジャルガルサイハンは「練炭は熱効率が良く暖かさが 長続きして、石炭よりはるかに良かった。なのに、突然販売がなくなった。もし本気で煙に 対処したいなら、練炭を春でなくて今販売してもらわないと」と言っていた。この件を当局 に問い合わせたところ、「5月以降は石炭をウランバートルで販売しない。だからゲル地区の 世帯あたり少なくとも1トンの練炭を出荷する必要があるので、販売を一旦中止した」とい う。良いものには邪魔がつきもの、というように、点火しづらく、問題点が多い燃料のため、 販売に伴うリスクを回避しているとの説もある。

「手を持って手首を持つ」※訳注/どんどん度を越していく、悪循環、の意 練炭生産を手がける「オスーコール」「デルスト・トホイ」(中略)など民間企業の製造過 程を見学した。いくら政府支援が重要とはいえ、その上にあぐらをかいている面はないのか? 契約には義務が伴い、締結時に条件を議論して合意したはずである。しかし、実際に生産開 始後、企業側は様々な言い訳を用意することが多いと担当大臣は言う。資金調達が必要、1 トン15万トゥグルグでの販売合意を正面切って覆しはしないが、遠回しに、色んな理由を 述べる。オスーコール社のH.ハリオン社長は「弊社はフル稼働で生産に励んでいるが、遠 距離の輸送が伴うため、輸送費がかさんでいる」。(中略)とはいえ、契約にも輸送費は規定 されている。前金も支払っているのだから、できない理由を数えるのではなく、すべきことをしなさい、とH.ツェレンバト大臣は促したという(後略)。 権力者であれ、政府高官であれ、地位に関係なく、人みな大気汚染の煙が緩和されること

を望んでいる。裕福でも貧しくても、有毒な煙を呼吸して暮らしているのは同じ。何らかの 方策を、口実でなく、出口を見つける必要がある。現状においては、練炭がその一歩となる かもしれない。とはいえ、政府の方針によれば、ひとりひとりの努力が重要という。「手を持 って手首を持つ」悪弊から脱すべき時だ。メーカーが良い燃料を生産し、販売業者がカネ儲 けに走ることなく販売すれば、消費者はより暖かく、煙の少ない燃料を使うだろう。 「ゾーニーメデー」紙より(2019年1月28日)

ウェブニュースサイト http://polit.mn/55039 (モンゴル語)

(記事セレクト・訳=小林 志歩)

※転載はおことわりいたします。引用の際は、必ず原典をご確認ください

************************************************************************************

ノロヴバンザトの思い出 その93

(梶浦 靖子)

読議能力と音楽的能力

そもそも五線譜など楽譜を読み理解する能力すなわち読譜能力と、音楽的な能力とは別 の ものだ。読譜能力はいわば文字を読み理解する能力に近く、視覚にもとづく能力である。

対して音楽的能力とは、音を正確に聴き取り聴き分ける力(音高や音色、またその善し悪し 等)、 旋律やリズムパターン、楽曲を素早く記憶する力、またいわゆる歌唱力や演奏技術、 また曲や旋律などを考え作り出す能力なども含まれるだろう。いずれも聴覚をよりどころと する能力だ。 したがっていくら楽譜が読めたとしても、それだけで音楽的能力が高いとは言 えない。 逆にまったく楽譜が読めなくとも、曲や旋律などを晦いてすぐに正確に記憶し、た だちに 口ずさんだり楽器で演奏し再現でききならば、音楽的能力があると見なせる。 少なくとも、楽譜を見ないと曲や旋律がなかなか覚えられないよりもずっと、音楽的能力は 高いと言えるだろう。 私の知っているモリン ・ホール奏者、シーグパドラハやアリオンボ ルドらは、首都の劇場所属の音楽家であったから、伝統楽器のアンサンプルに参加し、革命 後に西洋音楽の理論や手法に基づいた新作の楽曲も 数多く渡奏していたから、五線譜の読み 書きは十分にてきた。それていて、民謡の旋律の独奏や「モリニィ`ヤウダル」の独奏、オル ティン・ドー の伴奏など伝統的な分野に関しては五線譜などの楽譜は使用しなかったし、曲 の習得の際も楽譜を介することはなかったようだ。特にオルティン ・ドーで、熟知していな い曲の伴奏をする場合も、事前に歌い手に手早くメロディーを歌ってもらい、音の動きをお およそ確認しただけで、ほぼ十分に伴奏することができた。 おそらくモンゴルの大革原の音 楽家たち、モリン・ホールやそれに類する楽器、その他 の伝続楽器の奏者たちは、そのよう にして楽器を演奏し歌の伴奏をしてきたのではないかと思う。その様子にはひとつの音楽性 の豊かさを見出すことができる。少なくとも、かじりつくように楽譜を見入りなからも、ま るでオルティン ・ドーの伴奏にならないよりもはるかに、音楽的に優れていると言える。

くだんの若い女性のモリン ・キール奏者だが、当時新たに組織されたモリン ・ホールを 中 心とする楽団のため、養成された演奏者の一人であったようだ。そして、私が書いて渡した オルティン ・ドーの楽譜というのは要するに歌のメロディーだけ、五線譜に単旋律だけを書 いたもので、楽譜としてはもっとも初歩的で簡単なレベルのものだった。それをあそこまで 食い入るように見入ってしかもスムーズに弾けないというのは、読譜能力はかなり低いと言 わざるを得ない。五線譜をまったく読めない状態に毛の生えた程度と言ってもいいかもしれ ない。

「田舎の音楽家は楽譜を見ないJなどと人を見下している場合ではない気がする。もちろん、 もっと読譜能力が高ければそうでない人を見下して良いなどという話ではない。

ここで論じたような読譜能力と音楽的能力の違いやその意味などは、音楽をする以前の、 むしろ常識に近いことではないだろうか。そのようなこともわからない人間を輩出するとは、 そして楽しそうに人を見下す発言をするような人間を育てるとは、いったいどのような教育 をしているのか。一般的な人間教育としても問題がある上に、音楽家養成のありかたとして どうなのか。そのような発言をする人間の演奏を聴きたいと思うのか、彼女を教育した人に 問いたい気分だ。芸術作品とその作者の人となり、人間性とがかけ離れている 例も時に見ら れるが、芸術家をわざわざそのように育成すべきではないだろう。 彼女がモリン・ホール学 習者の内でどの程度の力量だったかは知らない。あまり優秀なではなかったかもしれないし、 もっと巧みにオルティン ・ドーの伴奏もできて、考え方ももう少し偏りのない演奏家もいる のかもしれない。しかしいろいろな人の話を聞くと、 彼女が「都会の音楽家」と表現した人々 が「田舎の音楽家」とされる人々を、音楽的にレベルが低いかのように見下す傾向が、近年 ではかなり顕著に見受けられるようだ。このことについてもう少し考えてみたい。

(つづく)

************************************************************************************

モンゴル学習支援事業&国府小学校

~先生、子どもたちからお手紙が届きました~

(モピ通信 201 号で、池上小学校としましたが国府小学校の間違いでした。訂正しお詫びいたします)

************************************************************************************

モンゴル学習支援事業&南住吉小学校

~先生、子どもたちからお手紙が届きました~

************************************************************************************

事務局から・

モンゴル学習支援事業は、例年1月から2月にかけて各小学校から要請が集中します。

学校によって2年生の児童数が50名くらいだったり150名を超える学校もあったりです。

モピスタッフは、4名~5名で対応しています。 大きな車をレンタルし、人も荷物もつんでの異動 は、旅役者みたいだと言いながらこなしています。 モピらしい活動だと自負しています。

担当者の高齢化は深刻な問題です。いろいろな 条件もありますが、やってみたいと思れる方を募集しています。

事務局までお知らせください。お待ちしています。

(斉藤 生々)

************************************************************************************

お孫さん同伴でのモンゴルの旅募集

(担当 : 村上 雅彦)

NPO法人モピは、主要事業一環として在阪の小学校に出向き主に2年生を対象としてモンゴ ルの住居ゲル(ミニチュア)・民族衣装(デール)・楽器(馬頭琴)などを持参しモンゴルの紹 介(いわゆる出前授業)をしています。詳細内容につきましては、過去のモピ通信を参照く ださい。

今般、モンゴル航空がウランバートルー関空直行7月、8月の2ヶ月間に限り毎週日曜日・ 水曜日発のサービスをするとの情報を得ましたので、掲題の事業を計画いたしました。概要 は下記ですが、参加者が集まりましたら詳細詰めたく考えますので事務局までご連絡ください。

1.期 間:約1週間

2.最少人数 : 3組6~7名

3.草原のゲルに滞在し広大な草原と野生動植物の観察を行う。

尚、飛行機の予約、現地スケジュール、お孫さんのパスポート等準備期間が必要と 思いますので、2019年3月末までに参加希望予定だけでも事務局までご連絡ください。

************************************************************************************

靑山讃頌舎2019年春展のご案内

(穐月 大介)

穐月明 可愛い絵・楽しい絵

(3月2日~6月23日・土日祭日開館 平日予約対応)

穐月明は動物や絵本など可愛い物が大好きでした。また、真面目そうな絵にもユーモラス な人物や動物が入っていたりします。そんな楽しい、可愛い、めでたい絵を集めてみました。 見て楽しく読んで面白い展示です。是非お出でください。

************************************************************************************

場 所 : 伊賀市別府718番地5靑山讃頌舎*大村神社に隣接
TEL : 090ー9860ー6432、Webサイト: aoyamautanoie.net 開館時間: 午前10時〜午後5時(入館4時30分)入館無料 基調講演「穐月明という画家―その仕事と生涯」
講 師 : 靑山讃頌舎 理事長 穐月大介

日  時 : 3月10日(日)13:30 場所:靑山讃頌舎GW塗絵コーナー「穐月明 おとぎ話の世界」

日  時 : 4 月27日〜5月6日

場 所 : 靑山讃頌舎 一般財団法人☆東洋文化資料館 ☀dakizuki@icloud.com☀

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

特定非営利活動法人 モンゴルパートナーシップ研究所/MoPI

事務所
〒617-0826 京都府長岡京市開田 3-4-35
tel&fax 075-201-6430

e-mail: mopi@leto.eonet.ne.jp

MoPI通信編集責任者 斉藤 生々

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

カテゴリー: モピ通信 パーマリンク