■NO 206号 モピ通信

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『Voice from Mongolia, 2019 vol.55』

 ノロヴバンザトの思い出 その96

  モンゴル学習支援事業&国府小学校

 モンゴル学習支援事業6アサンプション国際小学校 

  事務局からお知らせ 

『Voice from Mongolia, 2018 vol.55』

(会員 小林志歩=フリーランスライター)

「目指すのは、ヨーロッパとは違う、モンゴルならではのチーズ。品種改良を重ねていないモンゴル牛が、自然の草だけを食べて出す牛乳を原料にした、オーガニックの工房チーズで、 皆をハッピーにしたい」

-Я.エンヘ―(52)、シルクロードマジック社代表

80年代後半にウクライナで学んだ技術者のエンヘーさ んは、ドイツで働いて帰国後、「収入が期待できる」食の業 界へ。シェフとしてレストラン経営の傍ら、2008年、牧 民の生活向上を目指すスイスの援助プロジェクトを通じて ナチュラルチーズ加工と出会う。以来、ロシアの専門講座等 で各種チーズ加工を学び、昨年秋、統一ブランド「モンゴル チーズ共和国」(Cheese Republic Mongolia)を立ち上げた。 現在は地方の工房とのタイアップを含め10数種類のナチ ュラルチーズを生産・販売している。昨年の生産量約40ト ン、今年は百トンが目標という。

「夏季のみの営業」(オリラリーン・チャナルタイ)とは 聞いていたが、本当に期間限定なのだ、モンゴルのチーズづ くりは!6月中旬、チーズ加工の現場を取材したくて出かけ たが、工房の見学を予定していたウブルハンガイ県でのヤク 乳チーズ加工はまだ始まっていなかった。春の少雨と低温で 「まだ夏が来ていない」。在庫も皆無で、ホテルや個人客が 「いつ出るの」と待たせている状態という。

「モンゴルには牛乳は豊富にあり、安価に手に入る、と思っている人が多いが、違うんだ」。 伝統的に、夏にはツァガーン・イデー(白い食べもの)と呼ばれる自家製の乳製品をメイン に食べる人々である。主食材の乳は、子牛が飲むほか、すべて余すことなく使われる。気温 が下がり始める8月中旬以降は、牧民は冬に食べる乳製品を加工するため、牛乳の入手は困 難になる。夏の前半が勝負なのだという。

首都近郊、トゥブ県ジャルガラントソムの工場を案内してもらった。民間業者がチェコの 技術で建てられたが、近年使われていな かった乳製品工場を借り、イタリアやロ シアから機材を入れて昨年開いた。地元 の人々を雇い、ピザ用の溶けるチーズを 生産している。

ロシアやスイス、フランスの技術者に 滞在してもらい、試行錯誤を重ねて、よ うやく満足の行く味と食感にたどりつい た。「今では、焦げ目をつきやすく、よく 伸びるように、など顧客の希望に対応で きる」と胸を張る。エンヘーさんの真っ 直ぐな情熱に、国境を越えて手を貸す 人々がいて、共同作業によって生み出さ れた主力商品だ。

工場を開いた当初は牛乳を売るのを躊 躇した地元の牧民も、今季は朝晩列をなして牛乳を売りに来るように。チーズを売るためにピザ店を経営、新たにベーカリーもオープンした。ビジネスパートナーのフランス人、パン・ 焼き菓子の専門家L.ディディエさん(62)は、リコッタ(ホエーから加工するチーズ)を たっぷり使ったチーズケーキの商品開発中だった。モンゴルのチーズの魅力を聞くと「原種 に近い牛の乳で、ここにしかない、オリジナルのチーズを追求できること」と話した。

シャングリラ・モールやEマートなど、外国人や国外で暮らした経験のある裕福なモンゴ ル人がよく行く大型店舗内に直売コーナーを設け、「とにかく今は知ってもらうことに力を 入れている」。JICA 援助の低金利融資を得て整備した自社ラボで少量生産するフレッシュモッ ツァレラ、白カビタイプのクリーミーな「ザイサンベール」、胡椒入りの「カチオータ」など、 試食して買うことができる。チョイジンラマ寺院博物館近くの自社レストラン「シルクロー ド」では、各種チーズを盛り合わせたプラトーをはじめ、チーズを使った欧風料理を提供し ている。一期一会の、チーズとの出会いをあなたもぜひ!

Silk Road Bar & Grill/営業時間 12:00-23:30 電話 +976-77318684

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今月の気になる記事

「モンゴルの家畜は(世界の家畜のなかの)セレブ」。数年前、国内有数の酪農地帯である 北海道・十勝を訪れた小長谷有紀先生は、こう表現された。

日本国内の大多数の牧場では、牛乳パックに描かれる牧歌的なイメージとは裏腹に、牛 たちは狭い牛舎内で多くの時間を過ごす。2歳くらいで初出産、穀物など「スタミナ食」 を食べさせられ、大量の乳を出すことを求められる。毎年のお産、数年後には肉になる。

一方のモンゴル、遊牧民の牛たちは気候こそ過酷だが、朝晩仔牛と会い、日本のホルス タインに比べればわずかな量の乳を提供し、それ以外の時間は広い草原でゆったりと草を 食む。十数年生きる牛も少なくないと聞く。

近年注目される放牧酪農だが、広い牧草地が必要となるため、北海道でも一部にとどま っている。放牧の牛から搾った牛乳には、生活習慣病の予防作用が期待できる共役リノー ル酸(CLA)が、牛舎で配合飼料を多く与えた場合に比べ3倍近く含まれる、との日本 国内のデータもある(一般社団法人 日本草地畜産種子協会 資料より)。

「国民ひとりあたり牛乳消費量は、296.8キログラム」 (筆者:X.オルギル)

6月1日は世界牛乳の日――。この日に向けて、食糧農牧業省や国連の農業機関、モンゴ ルの食品関係機関、関連団体、国際機関グローバル・コミュニティ・モンゴルなどが共同で、乳の付加価値向上をテーマにしたミーティングを開催した。安定した乳業発展、目標達成、 乳業政策や施策、発展のための戦略、人材などの諸課題について、業界の代表らが話し合っ た。政府は、2016年~2020年の事業として、国民に安定的に食糧供給すること、季 節による生産への影響を小さくすることを目指し、「肉と乳キャンペーン」を初展開している。

国全体で生産される乳の備蓄量は、2018年において92万6200トンとなっている。 このうち、ラクダ乳が1万1500トン、馬乳8万3900トン、牛乳55万3300トン、 羊乳10万3800トン、ヤギ乳14万9800トンとなっている。酪農の集約的農場には 7万4千頭の牛がいて、このうち25%にあたる1万8500頭を純粋な血統の牛が占める。

日に平均1頭の乳牛から18リットル、残り75%にあたる5万5500頭は混血で1頭 から平均7リットル程度を搾乳している。モンゴル国民1人あたり、平均して296.8キ ロの牛乳を消費していることになる。

食糧農牧業大臣Ч.ウラーンの談話:世界牛乳デーの行事に参加する国の数が毎年増え、各 国がそれぞれのスローガンを掲げて、この日を祝っている。モンゴル国では2016年以降 4回目となり、「母国のミルクこそ健康食」を合言葉に祝賀行事を行う。

わが国では国民ひとりあたり、年に296.8キロの牛乳を消費している計算になる。1 日に必要な食品のカロリーや基本的な栄養、ビタミン、ミネラルの量として、2017年に A74番政令として保健大臣が承認した数字がある。これによると、1日に、3.2%以上 の乳脂肪を含む乳製品を160グラム以上摂取するべきだという。

ウェブニュース https://www.peak.mn/news/manai-ulsiin-neg-khund-jild-dundjaar-2968-kg-suu-nogdoj- baina  2019年5月26日 (原文モンゴル語)

(記事セレクト・翻訳=小林 志歩)

※転載はおことわりいたします。引用の際は、必ず原典をご確認ください

ノロヴバンザトの思い出 その95

(梶浦 靖子)

伝統あってこその革新

「新モンゴル音楽Jを実践している音楽家は、自身らを音楽的に斬新な試みをしており、 現代的な新しい音楽を作り出している、という意図に基づいているのかもしれない。確かに、 それらの音楽のそうした意味や価値は番定できるものではない。モンゴルの国内やモンゴル 文化、モンゴル社会の内部でなら、それらは新時代の音楽として称賛されるのかも しれない。 しかしモンゴルの外部の人々、モンゴルを除く世界 の人々の耳にもそのように 響くとは限 らないのではないか。

なぜなら、聴衆が古い形を知っていなければ、それにどのように斬新な創意工夫を加えよ うとも、その新しさは伝わらない。モンゴルの伝統音楽の昔ながらの楽曲、音色、鳴り響き、 表現を世界の人々が知っていてくれなければ、「新モンゴル音楽」の価値は十分に は理解さ れないということだ。

ゆえに「新モンゴル音楽」の人々は、自分たちの音楽が十分に理解されるためには、昔なが らのモンゴルの伝続音楽を世界の人々に知ってもらわなければならない、ということになる のだ。昔ながらの音楽家と同じかむしろそれ以上に、モンゴルの伝統音楽の古い形を知らし める努力をすべき立場にあると言えるのだ。昔ながらの音楽家たちを見下している場合では ない。モンゴル音楽のそもそもの形を世界の人々に知ってもらうためには彼らの協力を仰が ねばならないだろう。彼らに教えを請う必要があるのだ。彼らに敬意を払い丁重に過ごすべ きなのである。

ノロヴバンザドを育んだモンゴル

モンゴル社会が西洋音楽と関わるようになったのが、二十世紀初頭、社会主義革命と共に であるなら、それ以前から存在していたモンゴルの伝統音楽、オルティン ・ ドーやポギン ・ ドーなどの民謡は、西洋音楽の影響をほとんど受けていない、独自の音楽であると言える。 ノロヴバンザドもまた、西洋音楽の教育をほぼ受ける事なく、モ奏法や五線譜の読み書きな どの経験はほぼなかったと思う。 それでも彼女の歌声は公演した世界各地の人々を驚嘆させ、 感動させ、大きな称賛を呼んだ。それはむしろ、彼女の歌声や歌の表現が、世界の多くの人々 に親しまれている西洋晋楽とは大きく異なっており、他の何物でもないモンゴルの独自性が 存分に発揮されていたからこその反響であったと思う。 公演した欧米のどこかの国の観客の 一人が、ノロヴバンザドの歌声を讃えてこう尋ねた ことがあったという。

「いったいどこの音楽学校で学ばれたのですか?」それに対し彼女はこう答えた。 「私はどこ の 音楽学校にも行っていま せん。ただ自分の能力に従って歌ってきただけで す」

このエビソードは終生、彼女の自慢であり 誇りであったようだ。音楽学校で学ばなかった というのは、特定の師匠についたわけではないことと 、西洋音楽の教育は受けていない、こ との両方を意味していたと思われる。誰かに教わって上達したわけではないし、西洋音楽の 助け (干渉?)など無してここまでやって来たのだという矜持が現れた言葉だったと思う。 「新モンゴル音楽」の楽曲やパフオーマンスの多くは、モンゴル風に味付けされているが、 西洋音楽だ。そのように受け取る諸外国の聴衆者は少なくないと思う。西洋音楽は世界の多 くの地域でお馴染みの音楽で、目新しいものではない。それは耳ざわり良く、とっつき安い かもしれないが、果たしてノロヴバンザドのような衝撃を与えられるか、疑間だ。 「新モンゴル音楽」の側は現代的に進化した音楽を演奏しているつもりが、議外国の聴衆に はさして珍しくない (もしくは聴き飽きた?)ものとして受け取られてしまう、という悲劇も 起ころ、いや起こっているのではないか。西洋音楽とは異なる、モンゴルの独自性をよリア ピールする音楽家がもっと出てくるべきではないだろうか。

特にモリン ・ホール奏者には、西洋のカノン形式のなぞりではなく、モンゴル独自の、オ ルティン ・ ドー独特のやり方で、歌声の流れを支え尊重する形で伴奏できる者がいなけれ ば、オルティン ・ ドー歌手は育たない。そのようなモリン ・ホール奏者がいなければ、 ノ ロヴバンザドに匹敵、あるいは超えるような歌い手は出てこないと思うのだ。そのことを、 「新モンゴル音楽」を含め、モンゴルの伝統音楽の歌手、演奏家すべてによく考えてほしい と思う。

 (つづく)

(モピ通信204号にその86は→その93.モピ通信205号にその87は→その94の間違いでした。お詫びし訂正い たします。)

モンゴル学習支援事業&国府小学校 (実施日:2019.2.6)

~先生、子どもたちからお手紙が届きました~

モンゴルパートナーシップ研究所様 先日は遠い中、国府小学校までお越しいただき、モンゴルについてのお話や、グルやデー ルの体験などをさせていただいてありがとうございました。
子どもたちも モンゴルについての理解を深め、デールを着せていただいたことや、グルを見 せていただいたことを大変よろこんでおりました。今、国語の学習で「スーホの白い馬」の 学習をしておりますが、いろいろお話いただいたおかげで想像をふくらませて学習に取り 組 むことができています今回 、教えていただいたことの感想を書きましたので、お送りいたします。

(国府小学校 2年生一同)

モンゴル学習支援事業&国府小学校 (実施日:2019.1.31)

~先生、子どもたちからお手紙が届きました~

モンゴルパート ナーシップ研究所

斎藤 生々様

この度は、アサンプシヨン国際小学校に、モンゴル体験授業のためご来校くださりありがと うございました。

モンゴルの文化に初めて触れる子どもたちの日は、とても輝いておりました。子どもたち の感想の中には、もっとモンゴルのことを学んでみたい文化を学びたい、人を学びたい!とい う学ぶチャンスの入り口に立った子どもたちがいることも分かりました。

二年生にとっては、現在学習中の 『スーホの白い馬』に繋がある大切な学びの機会とな り ました。 三年生は、さすがで、一年経って学びを振り返り次の学びにつなげていこうと する姿がみられました。

ゲルを実際に建てて頂いたことで、ゲルの全ての部分が生活そのものと関わり合っている ことを子どもたちは、実感できたのだと思います。

わたしたち教師も、様々な情報をいただき、また、よリモンゴル文化を子どもたちととも に学んでいきたいという思いになりました。

昨年、ユネスコスクールとして認定されましたので、今後も子どもたちの想いを将来の活 動につなげていけるよう努力したいと考えています。

今後とも、是非お世話になりたいと考えております。また、来年の2年生の活動について、 改めてお願のご連絡をさせて頂きたく存じます。 よろしくお願いいたします。

同封いたしました手紙は、2年生3年生が書きました。インフルエンザ流行のため、今週 に入り、 2Aと 3年生が学級閉鎖してしまい、郵送が遅れてしまいました。 今年はインフ ルエンザの罹患率が非常に高いように思います。Mopiの みなさまも、寒さが益々厳しい折、 ご自愛くださいませ。

みなさまのますますのご発展、ご活躍をお祈り申し上げつつ。

2019年 2月 6日

聖母被昇天学院

アサンプション国際小学校

佐々木 扶実子

事務局からお知らせ

今年も異常な気候不順が続いています。これからの暑さはどうなるのでしょう・ モンゴル学習支援事業の寄せられる子どもたちの手紙、届いているもの全部をみなさまに、 見ていただきたいと思いますが紙面の都合で一部だけに。心安らぐ一助になれば幸です。

ピ通信8月はお休みです。207号は、9月1日発行になります。

これからの夏のモンゴル、快適でしょうね!


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事務所
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MoPI通信編集責任者 斉藤 生々

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